ごあいさつ
「あの時のかぶら寿しにようやく巡り会えたわ…」
東北の百貨店で開催された物産展に初めて出展した折、お客様から頂いたこの言葉が忘れられません。
そのお客様は、五十年も前に訪れた金沢旅行で、初めて食された「かぶら寿し」の味が忘れられなかったそうです。後に何度も各種お取り寄せを通じてかぶら寿しを召し上がり、どうしても当時の味にたどり着けず失望を繰り返してきたと。だから今回もがっかりするのが嫌だから買わない、とまでおっしゃいました。「そのかぶら寿しはかばたのかぶら寿しに違いない」と密かに私は確信しました。なぜなら、当時かぶら寿しを製造販売していたのはかばただけだったからです。しかしそれは言わずに、もうすっかり諦めておられたそのお客様に、もう一度お試し下さいと当店のかぶら寿しを半ば強引にお勧めし、お買い上げ頂きました。
そして二日後、この忘れられない一言を頂いたのでした。
人間の味覚のなんと素晴らしいことか。たった一度口にした味を、数十年たっても忘れないばかりか、その違いをしっかりと認識できるなんて。そしてもう一つ、このお客様のお陰で、当店のかぶら寿しは数十年間味にブレがなかったことも確証できたのです。
かばたのかぶら寿しは在来品種の「金沢青カブ」を使います。これが大きな特徴です。在来品種の野菜はその土地に根ざして固定されてきたものです。昔から継承されてきたかぶら寿しは在来種のカブで漬けるのが当たり前なのです。
商売は革新の繰り返しです。そうしなければ生き残っていけません。最大の顧客満足は、存在し続けることだと考えます。変えていくものと変わっていくこと。変えなくてはならないものと絶対に変えてはならないこと。お客様に愛される漬物作りを継承していく先に進化が生まれると信じて。
今日も明日も社員とともに、製造と販売の現場に立ち続けて参ります。